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オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

システムエンジニアを退職した伊藤はコンビニ強盗に失敗してしまった。伊藤を捕まえたのはかつての級友であり、異常な程に残虐な性格をもった城山であった。城山から逃走した伊藤が突如"荻島"という離島に連れてこられてしまう。

荻島は300年の間外部との接触がなく孤立した島であった。

島には、しゃべるカカシ・島民から殺人を許容された"桜"という男・ウソしかつかない画家などおかしな人物ばかりがいる。しゃべるカカシは崇拝とも言えるほどの信頼を島民から受けていて、例えば島で犯罪が起きれば即座に犯人とその居場所を島民に教えるなど特別な能力があった。

訳もわからず島に連れてこられた伊藤に対してカカシは島民に対しては決して言わない"未来の事"を語りだす。

「自転車をこぎなさい」

一方伊藤に島の紹介をしていた日比野は島の言い伝えを語りだす。

「この島にはたった一つだけ欠けているものがある。そして外部から来た人間が"それ"をもたらすだろう」

全てが狂っている島に伊藤が訪れた翌日、カカシが何者かによって殺害されてしまった。

いったい誰がカカシを殺したのか。

カカシの予言は何を意味するのか。

この島に欠けているものとは何なのか。

なぜ桜は殺人を許容されているのか。

伊藤が来る3か月前にこの島を訪れた曽根という男、鳥とカカシだけが友人であるという男、太ってしまって一か所から動けなくなってしまった女性、地面に耳を押し当てている少女―。

謎が次々と現れる中、伊藤はカカシを殺した犯人を探し始める。

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伊坂幸太郎のデビュー作です。

伊坂幸太郎といえば、軽妙な文章と鮮やかな伏線回収ですが、本作もそれに洩れず多くの謎が次々と現れます。

ミステリというのは、子供がおもちゃ箱からレゴブロックを取り出して何かを作ろうとすることに似ています。

伊坂幸太郎は「そんなブロックとりだしてどうするの?あ、そんなのまで取り出して、ちゃんと作れるの?」とこっちが心配になるくらいブロックを取り出して、そこから見事に何かを作り上げる名手です。

しかし、近年の作品と比べてこれぞデビュー作と言った感じで、このオーデュボンの祈りは、謎は次々にばら撒かれるけれども片づけ方は随分と雑です。

おもちゃ箱ごとひっくり返してレゴブロックを一応は積み上げて何かを作ってはいますが、使い切れなかったブロックをこっそりおもちゃ箱に返していたり、余ったブロックを適当に積み重ねて「塔」と言い出したり、といった言った感じでしょうか。

一番大きなテーマといえる「この島に欠けているもの」は物語的には不満足ですが、小説という事を考えると予想外からの答えという意味では面白かったです。

ともかくこの作品はは「伊坂幸太郎という才能」が一切操縦されないままに才能の先走るがままに飛び回っているようなものです。

「伊坂幸太郎大好き」という方が、その才能の暴走を楽しむにはとても良い作品です。一方で伊坂幸太郎の一冊目としてはあまりオススメできません。

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» 伊坂幸太郎さんの小説が好き [ノゾミンのボチボチな毎日]
小説はもちろん、原作の映画もハマってます [続きを読む]

受信: 2010年5月27日 (木) 17時15分

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