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セカイ系の分析② "世界の危機という装置"

さて、前回も書いたがwikiを見るとセカイ系とは

「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、『世界の危機』『この世の終わり』など、抽象的な大問題に直結する作品群のこと」と定義される場合があり

とある。
今回は上記の説明のうち、『世界の危機』『この世の終わり』について考えてみた。
古くはウルトラマン、人気コミックで言えばドラゴンボールや幽白なども世界の危機が背景としてある。
これらに共通するのはバトルものであるという点だ。
つまり、そもそも『世界の危機』というのはバトルものとの食い合わせの中で「戦う理由」として発生するものなのだ。

この『世界の危機』という装置をバトルモノ以外のテーマに適用させるという実験的手法がセカイ系なのではないだろうか。
テーマとは思春期の葛藤であったり、恋愛であったり、さらには推理モノなどの一般的な物語でも扱われるテーマの事だ。
前回、エヴァの影響下で"どういう遠ざかり方をしたか"と、あたかも全ての作品がエヴァの影響を受けているかのように書いた。しかし、本当はエヴァによって、"世界の危機という装置が物語を盛り上げる武器として使える"事に気づいた敏感な作者達が、その装置だけを切り出してそれぞれの作品で使っているという事なのではないだろうか。

もちろん『世界の危機』というテーマを扱う以上、何らかの形でセカイ系の主人公達も戦闘を行う必要がある。
wikiによると

セカイ系において、世界の命運は主にヒロインの少女に担わされる。陰惨な戦闘を宿命化された少女(戦闘美少女)と、それを傍観する以外は何も出来ない無力な少年というキャラクター配置もセカイ系に共通する構図とされている

つまり多くのセカイ系ではバトルにあたる部分をヒロインに転嫁してしまい、主人公の"ぼく"はあくまでも作品本来のテーマ(恋愛、思春期の葛藤など)の傍にいるのだ。

では作品本来のテーマとは何なのか。
エヴァではそれは思春期の葛藤(親との関係、周囲との関係、性欲など)である。
エヴァでは主人公もエヴァに乗り『世界の危機』と直接戦うが、それすらも主人公の葛藤というテーマを活かす為の手段に過ぎない。

そしてエヴァのように、多くのセカイ系の特徴としては主人公もしくはヒロインが何らかのロボットに乗る(orなる)という点が挙げられる。
本来、『世界の危機』をもたらすほどの存在に対する対抗手段として主人公たちは物理的に強くなるために修行などをするものだ。ところがセカイ系の作品では物理的に強くなるための努力は軽視され精神の問題に焦点が当てられる。この"強くはなりたいけど努力はしない"というのもいかにも思春期の妄想らしい。
その結果テーマと結びついた"意志の力"(恋愛モノなら愛情の強さ、葛藤ものなら葛藤の克服、など)によって対抗することになる。

こうして『世界の危機』及び危機への対抗手段をワンセットにして、一個人の物語の障害としてセットしたものがセカイ系なのだ。(なので、厳密には"系"という言葉はおかしい気がする。)
エヴァ以外で言えば最終兵器彼女は「恋愛」というテーマを扱った作品だし、「ぼくらの」は「死」というテーマを扱った作品でその味付け(障害)として『世界の危機』が組み合わされたのだろう。
(ちなみに私は20世紀少年もセカイ系とみなしている。っていうか一般的にそう分類されていないのが不思議でしょうがない。推理モノ+『世界の危機』という構成。)

以前エヴァの映画を見たときにも書いたが、恋愛であれ死であれ、そこに用意された障害がでかいほど話は盛り上がる。
つまりセカイ系とは、『世界の危機』という巨大な装置がバトルもの以外にも適用できるという発見によって大流行してしまっている状況なのではないだろうか。
今後も世界の危機というテーマは様々な物語の一角として存在し続けるだろうが、バトルもの以外の『世界の危機』はいずれ落ち着くのではないだろうか。

ところで、エヴァであれ最終兵器彼女であれ最終的にはテーマに帰って来て話は終わっても、用意してしまった『世界の危機』という装置を解決できずに終わってしまっている。
偏狭な個人の現実問題の解決と同時に、用意してしまったでかすぎる装置の片付けを無理なく完了させた作品があればぜひ読んで見たい。

さて、セカイ系だと思った瞬間に自分がさめてしまう理由が分かってきた。
どうやら恋愛モノおける障害物の大安売りだとかドラマの障害者安売りに対する嫌悪感と同じだったようだ。
"またセカイの危機か"、と。
とりあえずまだまだセカイ系を大量に読んだわけではないので、しばらくいろんな作品を読み込んで見たいと思う。

ところでスポーツモノと『世界の危機』を結びつけた作品はまだないのでは、と思うのだがいかがだろう。
今日の試合でワンツーパスを5回決めないと世界が滅びます、とか。
・・・無理だなw

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